何かになるためではなく、何にもならないために生きている気がする。
「ここでは、あなたは何にでもなれる」
というネットゲームのキャッチコピーに、背中がヒヤリとする。
子供のころ、「あなたたちは無限の可能性を持っている」とよく言われた。
どうしてそんなことを言うんだ?と私は思った。
それはコンマ数パーセントの確率で宇宙飛行士になれる代わりに、殺人者にも、ホームレスにもなるということと違うのだろうか。
まだ、それにならない方法も知らないのに。
大人になり、私は宇宙飛行士になれる可能性をなくした代わりに、殺人者になる可能性を毎日毎日減らして生きている。
当時の私が知ったらきっと恐ろしいことに、
こんなに年を取っても「何かになれる可能性」から逃れることはできない。
可能性は無数にあり、いつでも私の体から放射状に伸びている。
そしてそれを私は永遠に見ることができない。
それはのっぴきならないことのように感じるのに、
隣にいる夫はどうして平気でいられるんだろう?
それがまた怖くなるのだ。
この世には私の知らないルールがあって、
私以外のみんなはそれを知っているのではないかという気がする。
何かになるためではなく、何かにならないために生きている気がする。